音楽之友社が、 従業員の労働環境の問題で何やらきな臭くて、それもこれも資金不足が原因でだろうから、いくつかの企画は予算が回らくなり途中欠けで終わるのだろうと思ってもいたが、出てきてくれた。
ペルルミュテールは、ラヴェル演奏については非常に高い評価を得ているピアニストである。一般に、ラヴェル直伝の奏法によるためという理由付けがされているが、これは厳密な言い方ではなく、ラヴェル自身は、演奏者の演奏に師範のように 介入することはなかったようである。しかしながら、求められれば助言くらいはしたようで、ペルルミュテールは、そこからさまざまな演奏上の工夫を引き出した、それをメモした楽譜という点が、この一連のペルルミュテール校訂版ラヴェルシリーズの最大の特徴である。
少なくとも、ペルルミュテールは、ラヴェルの音楽に非常な時間を割いていたことも間違いないようである。ただ、研究家の退屈な演奏というものも世の中に蔓延していることもまた確かなことだ。だが、この点の心配はないように思われる。ペルルミュテールのラヴェルは、精巧な静かな詩情に満ちたものである。なかでも、『クープランの墓』に関しては、最高の名演ではないか? なかでもトッカータは出色で、一般に技巧的な音楽として、音を外さずに弾きこなすことで話題になる音楽の一つだが、そういう事情もあってか、一息に捻じ伏せる演奏が多いのもまた事実である。思い出したようにルバートをかけたところでダメである。ペルルミュテールからしてみれば、芸術上の効果の問題以外に見ないので、この音楽の構成を大雑把に把握すれば、あとは前後の部分の対比を強調して、大団円へと向かっていくというからくりを主軸に置くことを基本とし、細部を練り上げていく。あるべきものがあるべきところで鳴っているという感じがするとともに、硬くならない。要するに理想的な演奏が具えているものを、だいたい具えているのである。「自然な演奏」と呼ばれているものは、概して無色透明の誇張を含んでいるものだが、ラヴェルの自然体ペルルミュテールの楽譜には何と書かれているのだろうか?
NIMBUS KOREA (2013-11-30)
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