前回の「トッカータ」の記事で、インチキ版なるものの解説をしたが、最近購入したメシアン夫婦によるラヴェル楽曲の分析本の中に、例の第5小節についての記述があった。
作曲者が許したとあるが、書面で残っているというわけではなさそうだ。
「メシアン分析本」版では、私のインチキ版の理論上の不備を補いつつ(完全にクリアしつつ)弾き手の負担を減らしている。難易度は私のインチキ版と同様で、楽譜通り弾くのが困難な場合は、こちらを採用すべきである。ただ、心得ておかなくてはならないのは、理論上の不備がないとはいえ、作曲家による許しがあるらしいとはいえ、ラヴェルは決定稿にソの音を左手に置くこの音の並びを採用しなかったということである。おそらく彼は、短二度の響きがほしかったのだろう。
ともあれ、これを踏まえて、録音をしました。4年ぶりにアップライトピアノの調律を行い、腕は相変わらずですが、音はよくなっているはずです。