2014年10月1日水曜日

ホロヴィッツのカルメン変奏曲が弾きたい! 第一回



  本日はホロヴィッツの生誕百一周年記念であります。それに引っ掛けてこういう企画を始めようと思います。どうぞよろしくお願いします。

 私は「ホロヴィッツによって、ピアノという楽器の魅力と限界を初めて了解した」と(酔った勢いで)言ったこともあるくらいのホロヴィッツのファンであります。なので、ホロヴィッツの代名詞の一つであるカルメン変奏曲を前々から弾いてみたいという気はあったのですが、まぁ、周知のとおりすさまじい難易度です。触れては放り出すの繰り返しで手につくものもつかないでここまで来ました。こういう企画でもしなければ一生弾くことはできないだろう、動機といたしましてはそういう次第であります。

 目標は、「ホロヴィッツの弾くテンポと同じくらい」で「音楽的に」弾くことです。前者はともかく、後者はあいまいでありますが、具体的にはミスタッチを減らして主旋律が聴こえればよい程度の感覚で構えています。

 使用楽譜は、 L. Edson Jeffery (2010)版です。数ある収録された1968年版の中で、ミスタッチがほとんど無い(ほんの少しある)と思われるテレビ放送版の映像、他音源をコマ送りで検証して作成したとされるものです。この場を借りて、この楽譜の製作にかかわった方々に感謝申し上げます。


 さて、この企画をはじめるにあたって、ごく簡明なところから始めることにしたいと思います。
 カルメン変奏曲の原曲は、ご存じのとおり、ビゼーの出世作であるオペラ、カルメンの第二幕冒頭のジプシーの歌と呼ばれる部分です。ビゼーの旋律美がいかんなく発揮された傑作と言えるものの一つでしょう。そして、カルメン変奏曲はこのビゼー原曲をもとに編曲を行ったモシュコフスキーの物に、ホロヴィッツが手を加えたものであると、一般には言われているようです。といっても、このホロヴィッツのカルメン変奏曲は、構成の面から言えば、序奏にあたる部分を大幅にカットした点を除けば、おおむねビゼーの原曲に沿った形になっておりまして、ホロヴィッツがカルメンのフルスコアを前にして構想を練ったという話があっても、全く違和感はないものではあります。モシュコフスキーのピアノ編曲を参考にした、ビゼーの原曲より直接書いた、どちらの可能性もあると思います。どちらの説も間違っているかもしれません。

 さっそく楽曲をみて行くことにしましょう。旋律の数は、楽曲解析など、まして作曲など、ずぶの素人である私が簡単にみたところによれば、四つで、それぞれをアルファベットにして並べると、A,B,C,D,B,C,D,A/B,A,コーダとなっているようです。古典的な、厳密な意味での変奏曲とは言い難く、歌曲に変奏曲の展開を応用したと言えましょうか。似通ってはいるものの、別々の旋律を用意して聴き手を飽きさせないビゼーの工夫を感じます。A/Bとなっている部分は、右手がAを左手がBを弾くことになっているという意味です。ハンガリー狂詩曲の第二番で旋律を三本同時進行させたホロヴィッツならではの処理と言えましょう。

 ただ、まともに主題(旋律)が提示されるのはAくらいで、あとの物は初出段階(提示)で、いろいろなもの、分解された対旋律、装飾的な音がくっついています。おそらく、原曲があまりに有名で物であるから、わざわざはっきりと生の旋律を提示する必要もないということなのでしょう。

 私の記憶ではAは最初と例のオクターブによる最後に出番があるので、非常に印象深いのですが、あとの物は、技巧他のきらびやかさが目がはいって隠れがちになるようです。練習に際しては、やみくもに音符を追っていくのではなく、旋律を指標にしながら練習していきたいですね。


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