かねてから、左手の鈍い動きが見ていていい心地がしなかったので、ここで左手練習用の楽曲に取り組むことにした。課題ばかり増やしていいことではないのだが、短い楽曲なら何とかなるだろうと、ショパンの前奏曲作品28-3ト長調を採用。左手練習の筆頭と言えば、どう作曲家の革命練習曲だろうが、長いし、しっかり聴くと案外冗長である。一方で、一分にも満たない楽曲に冗長を感じる暇はない。
英雄ポロネーズ
(1)竪琴みたいな上昇音階の部分、左手のF音が出ていなかったよう(Fを加えて弾くと聴き慣れない響きがした)なので、腕の動きを覚えなおし。
(2)中間部オクターブ連打の部分で、最初数小節両手でこなす処から、両手に移行する部分の安定感に欠けるため、集中補習。――こういう目につく部分を長い間放置しておく所に、私の個性(悪癖)があるように思われる。この手のものぐさは勉学にも発揮され、随分と損をしてきたに違いない。こんな個性はいらない。
(3)オクターブ級、根音+三度で構成されている和音(竪琴音階直前や、オクターブ連打の末尾付近)で、小指が届かない、届いていても音が小さいという問題があった。そこで、指が鍵盤を押す位置を下部から中腹に場所を変更する(同時に脇も広げて、手の向きを変える)ことによって、若干クリアになった。無駄押しのリスクはあるが、それはもとからあるもので、軽減も増加もしていない。
遺作マズルカ
(1)ペダリングを変更した。装飾音が付く音にペダルを当てるという単純なもの。指の方は淡々としていても、リズムにアクセントが付いて、躍動感が内蔵されたように思われる。楽譜の指示通りでは響きすぎる。
トッカータ
(1)ポロネーズの(3)の課題を、例の冒頭、一度付四和音に応用した。Dの音とEの音が音楽に加わった時の、澄んだ響きを耳にしてしまったら、もう逃すわけにはいかないという気になってしまう。ギーゼキングが、ドビュッシーの和音は低音域も加わって初めて美しい響きとなって表れるみたいなことを書いていたと思うが、きっとこのような現象はラヴェルにも当てはまるのだ。実に美しい。