「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」はじめました。
ドビュッシーの『子供の領分』の「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」を取り組み始めました。こんなことをやっているから、ラヴェルの「トッカータ」の進捗状況が改善されないわけですが、一向に崩しきれない、それどころか傷一つつかない岩盤のような難曲を前にし続けていれば、モチベーションは下がる一方。気分転換もたまには必要と言うものです。「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は、ベネデッティ・ミケランジェリで聴いて以来継続して好きだったというのもありますが、短くて、重音よりも単音が多く配されていて、緩急内容豊か、ということで選びました。
採用楽譜は、今のりに乗っているベーレンライター社の版です。楽譜屋でたまたま見かけた今月の一冊の一つだったと思います。同曲の製本された楽譜をもっていなかったのと、触れ込みシールを簡単に読んでそのまま買った記憶があります。解説(独・仏・英の欧文三種)が本全体の半分を占める気合の入ったものです。長い上に専門分野ですが、英語があるので何とかなるでしょう。なんでも、作曲者のピアノロールも参考にしたとか。
ドイツで主に原典版の出版を行っているHenle社は、サービスの一環として、出版した楽曲の難易度を「1」から「9」に分けて表示しています。たまに眺めながら、自分が取り組んでいる楽曲の難易度をしり目に、次は何を弾こうかと物色するのですが、この「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は「6」となっています。難易度の横軸で再検索するとラヴェルの「パヴァーヌ」も「6」となっています。「亡き王女」など、キャッチーな名前が付され、よく耳になじむ物悲しい旋律を擁する同曲ですが、開けてみれば難易度は高めです。ただ、同程度の難易度と言っても、難しさの性質はまったく違い、「亡き王女」が、ゆったりとした重音進行や幅の広い分散和音をこなしつつ旋律を拾っていかなければならない難しさを持つ一方で、「博士」では和音自体が少なく、上下駆けまわる単音の連なりを速めのテンポで正確に弾くところに難しさがあります。